「みなさんはどんな看護師になりたいですか。病と向き合わざるを得なかった一つの家族の形を伝えたい。こんな家族がいたら、どんな表情で、どんな言葉をかけますか。いっぱい考えて下さい」
大阪府高槻市のホールにこの夏、看護学生たちが集まった。国立病院機構近畿学生フォーラムだった。講演会の講師はフリーアナウンサー清水健さん(48)。マイクを持ち、舞台の真ん中で語りかけた。
妻の奈緒さんは2015年、乳がんで亡くなった。29歳だった。
スタイリストの奈緒さんとは仕事場で出会った。当時は読売テレビに勤め、キャスターとして報道番組に生出演する日々。本番前に緊張している清水さんに「大丈夫ですよ」と声をかけ、支えてくれる人だった。
結婚し、妊娠してすぐに悪性の乳がんとわかった。家族3人で生きる。そう決めて治療を始めた。
14年10月、無事に出産し…